終末を待つだけの雑記

永久に青春を感じる中年がお届けします

そして遠くない未来に

自分はだめなやつだと言う認識を捨てきれず散歩と読書をしました
こんにちわ僕です

本題の前にしろくま先生のエントリに非常に共感したので共有させてください
該当エントリ内での言及、

私は短時間に本を読み過ぎると頭がぱんぱんになってしまうし、物語にハマると感銘や感動にいちいち足止めされて、なかなか先が読めなくなってしまう。だから私は読書家には向いていないと自認していた。

という一文があった
これについて随分と自分も同じように考えていた
1日で読み進めることのできる文章量は少なくないと思うが、シリーズものでなければ何冊もの本を読み続けることは難しい
ボクはフィクションでこの傾向が顕著だと考えている
また続けてしろくま先生は次のようにも言及している

それでも40代になってから、以前よりずっと読めるようになったし、そうなれたのは過去に読んだ本たちが読書をアシストしてくれるおかげだ。

読書は人生のメタになりえるているのかも知れない
しろくま先生のエントリから引用させていただきました

p-shirokuma.hatenadiary.com

 

今日の本題は以下の本についての言及

冬にそむく 石川博品

すごい作品であった
多分すごい作品だった
そしてこれはライトノベルである
このようなフィクションに出会うたびに、石川博品に再会するために生きているのかもしれないということは大げさではないと考えている

お前はいつまでそんな乳臭い本ばかり読んでいるのか?と誰かに言われそうだが好きなものは仕方ない

できるだけ核心を避けて書いていくつもりだが、どうしても書かないといけない部分については触れてしまうこともあるかも知れないので承知いただきたい
僕は義務教育及び高校教育において常に国語が赤点ギリギリの2か3だったため、そのような核心をつくテキストはかけない

この物語は現在(少し前まで)我々がおかれているシチュエーションを作者なりに解釈をした世界である
特殊な状況によって日常生活が少しだけ窮屈になった世界で男子高校生である主人公目線で日常を切り取る形で物語は進行する
謎の恋人と自分との不可思議な関係から始まる小説は、主人公の状況をできるだけ客観的な視点で描こうとしているが一人称のかなり内側で書くにとどめている

amazonにはこうある

終わらない冬のなか、二人はデートする。

年が明けてからもずっと「冬」が続くという異常気象。
気温のあがらない夏、九月に降る雪。コメの収穫は絶望的で、原油価格は上昇し続け、消費は冷えこんでいる。もう世界は終わってしまったのかもしれないと、人々は日に日に絶望を深めていった。

神奈川県の出海町にある海水浴場も一面雪で覆われ、サーファーも釣り客もヨットのオーナーも姿を消した。この町で育った高校生、天城幸久にはこれまで想像もつかなかった光景だった。降り続く雪でリモート授業も今では当たり前になっている。世界はもうすっかり変わってしまったのだ。

雪かきスコップを手に幸久は近所のとある場所へとやってくる。
金属製の門をくぐった先には、前面が総ガラス張りの変わったデザインの家が建つ。その敷地内で雪かきをしている女の子がいる。高校からこの町へ越してきた同級生、真瀬美波だ。彼女はこの家にひとりで住んでいる。
幸久は彼女の家へと通い、雪かきを手伝うことが日課になっている。

幸久と美波はすでに交際しているのだが、学校ではほとんど会話もしないため、クラスメイトたちは誰もその事実を知らない。
雪に閉ざされた世界のなか、二人は秘密のデートを重ねていく。

石川先生が書いた渾身の愛の物語である
(すべての石川作品はラブストーリーなのだが)

恐ろしく寒く冷たい世界はどこか薄ら暗い
主人公である幸久と恋人である美波の関係を読み進めれば読み進めるほどに脆く心細く感じることになる
この物語は愛の話ではあるが故、必要以上の説明をしない
そのために脳内でどのような状況であるのかを何度も再生しながら読み勧めた
扉絵にたどり着く度にドキドキとした

青春の押しつぶされそうな恋愛をちゃんとギュッと描いている
どれだけ考えても来てしまう朝を様々な感情で迎える文章の切り口のあまりの鮮やかさに舌を巻く
選択をできること・できないことについて、大人になること・変えないことについて、そして変えられない無力さ、そのようなものについて諦めることなくコンパクトに書ききっている
僕のようなものはどうしても過剰な表現で長く長く書いてしまうが、石川先生の作品はどれをとっても鋭利だ
1行たりとも逃すことを許してくれない

二人の関係が深くなることは時間を進めることであり、お互いのことを知っていくこと『冬』が時間を止めてしまっていること、お互いの状況がそれぞれに変わっていくこと、それらが浮き彫りにする凡庸であった幸久の『非凡さ』と、非凡であるように描かれる美波の『凡庸さ』についてどんどんと引き込まれてゆく

内容に触れないように書こうとすればするほどに遠回りで歯がゆい表現になってしまう

石川作品の中ではかなり現代に酔った作品で更にそこまで過激な作品でもない
温度感としてはヴァンパイア・サマータイム 先生とそのお布団ぐらいだろうか
しかしこの作品は明確なテーマがありそういう意味ではボクは再生数、ボクは死に近くもある
ただこの作品を読んで通じて感じたことがある
『ネルリシリーズ』を石川先生自身で再生産したのではないかということだ

 

純愛は状況や環境、境遇などによるどうしようもない環境が作品を成立させ、それを何層にも大事に折りたたんで凡庸な小説として本屋に並ばせている
今北産業で説明できてしまう細いストーリーの中に無数のイメージが有り全部違う味がする

メディア展開するなら下手なアニメ化ではなく実写映画でお願いします!
画作りは岩井俊二でお願いします

いやぁ、面白かった