クリスマス・イブ
静かにキスをして、胸に手を当てると、トクントクンという、心臓の音が聞こえた。体温まではまだまだ遠いのだけれども、僕はその音を聞いて安心する。けれども彼女は僕のことを少しだけ見て、本来あるべき場所に帰ろうとしている。僕がその場所がすきでも嫌いでもないから、なんだかただ単純に悔しくて、悔しいという感情があることがとても不思議なのだけれども、そういう感情と一緒に僕が自分ではなくなるように頭の中が無茶苦茶になるような気がして、凡人である自分が一番どうしようもないなと思って、笑った。彼女はどうしたの?って聞いてくれるんだけれども、僕はすきだよって言って、またまた、って茶化す女の子と心の中でため息をつく。電車が来るまでの10分ちょっと。僕の一番大事だった時間。そんな淡い恋も僕はしていたのだ。
珍しく残業をしています。